増築と漏水と設計士と神話病

大工の親分からTEL有りまして相談が有るとの事

『あのなー昔に増築された場所が雨漏りしよるんじゃわ』

『そうですか、漏れてる場所は部屋にですか? 屋外にですか?』

『それがのぅ、今回部屋ではなかったんじゃが、部屋にするべく工事しとるんよ』

『まあ、それで雨漏りが発覚したんじゃがのぅ』

『ふーーーん なるほどっすねぇ・・・まあ、ちょっこし暇になったんでw行きますわ』

『おお、助かるわ 来てくれえや』

『了解です♪』

基本情報として増築部分は1Fの部屋を増やし その屋根にあたる部分をバルコニーとして

利用 あまり雨当たりしないように上に屋根もある そんな状態だが

横風があたると雨は降りこんで来るであろう構造である


写真の右手に黒い柱が見えると思いますが、これは

サッシ製の張り出し屋根の支柱です。

素人目で見ると、こんなに屋根が張り出して、尚且つ上に屋根が有るのなら、

雨漏りなんて無縁なんじゃあないの? とか

床をFRP防水で仕上げているのなら 一番高い防水なんでしょ?

漏れるなんておかしいじゃん? なんて思いがちなのですが、

僕の目線で見ると 駄目な部分がいくつも見えてしまうのです。

前に施工した防水業者も悪いのですが、そもそもな話

プランニングして図面を書いた人も

随分と罪深い現場だよなぁ と思うわけですよ・・・・

当然実務サイドは設計に逆らえないわけですからね

ぱっと見は防水の上に歩行用タイル仕上げって本当に格好良いのですが、

いざ、防水に不具合が起きた際には莫大に修繕費用がかかるという事の

徹底がなされていない事

FRP防水やって タイルで保護してれば 大丈夫でしょう 的な?

増築って実はとってもデリケートです

本宅と増築部分は建物の動きが絶対にリンクしないので

動きの差が起きる 起きるという事はその間(ムービングジョイント)の

水が廻らないようにする工夫が必要なのだが、FRP神話病(注)に

プランニングされた御方も罹っていたとしか言いようが無いという事ですね

広島という地域柄、立地条件的にも問題が有って、風の吹く方向に

傾向があり、雨が風を伴って降る時は、西風が吹きやすい。だから

カーポート状にサッシで出来た屋根が、南から北にほぼ真上に

屋根を葺かれていても、西から吹く風を伴って、雨の日は相当降りこんで

くるであろうという事。

注目していただきたいのは 手摺腰壁のサイディングの下に有る黒い金物

専門的に言うと水切(みずきり) の高さが明らかに低いという事。

こういう防水の収め方をしているので 床から立ち上がっている防水が

水切よりも高く施工されているか?は 見えない部分ですのであくまで

想像に過ぎないが、水切高さ程度しか施工していない可能性もあるなと。

4枚目の写真に注目してくださると分かる事は増築部分とのつなぎ部分が

かなりな手抜き状態になっているという事。

FRPという防水は要素として 塗り防水と貼り防水の両方の面を持っていて

ガラスクロスに樹脂を沁みこませて塗るというイメージと

ガラスクロスに樹脂を沁みこませたものを貼るというイメージの

防水なんですね だから FRPを『塗る』という概念で施工される方は

塗り物防水の特徴である 『端末から漏れ難い』という考え方を持って

現場で施工される方も少なからずいらっしゃって、 端末の処理が

曖昧でも漏れないと思われているんですけど実際は後者の要素も

注意しておかないと今回のような事故事例が起きてしまうのです。

画像では分かり難いかもしれませんが、FRP防水の端末に複数の口開きが

散見されますし、過去にも口開きが有ったのでしょう。シールを打った痕跡が

残っています 100点満点の回答とは言いませんが、この防水の端末に

水切金物を打設しておけば、口開きも防げたと思いますし、仮に開いたとて

漏水の原因の一翼を担う事にはならなかったのでは?と考えます


こんな状況で漏れを完全に止めるにはどうするのが良いか?

正直高額になるが、

プラン1

◎ 手摺の腰壁のサイディングと水切の撤去 防水後 新設

◎ タイルの全面撤去、防水後新設

プラン2

◎ 手摺の腰壁のサイディングと水切の撤去 防水後 新設

◎ タイルの上に下地を作成 かぶせ工法で防水し、タイルを貼るなら貼る

正直現状では この2択しかないのだ。

ただし 現場には御施主様の事情というものもあるわけで、上記を口頭で

分かり易く説明したうえでのご回答が

● 今増築部の一階の部屋を新設している関係で予算が無い

● 今の床タイルが気に入っている為 上から防水をかぶせるのは

  仕上がりとして気に入らないであろう

● ましてやその上にご新規でタイルを貼る予算も捻出は難しい


こうなると八方塞がりです。。。。

こちらも関わる以上は責任が発生するため、きっちりご納得頂かないといけません

施工して結果漏れても責任も絶対に問わない という事で

見えている部分のみ補修が効く範囲で補修してみる という結果になりました。

いざ、それの見積を作れといわれても 自分も困ったりするわけですが 笑

建物の増築をお考えの皆様

安易にデザインの良し悪しだけでなく、新旧取り合いの防水というものは

簡単ではなく デザイン以上に注意しなくてはいけない事が有るという事を

頭の片隅において発注されることを望みます。


(注)FRP神話病

私が作った造語ですが FRP防水が誕生して間もない頃 設計士間で非常に

気に入られ ありとあらゆるシチュエーションでFRPの防水を提示する設計士が

多数生まれた時期が有りました。結局 たとえ強靭なFRP防水でも

シチュエーションによっては膨れが多数発生したり 端末の浮きを指摘される

そこから押え金物が必要な防水と認識されるまで時間も掛かり事故が絶えない

そんな事を繰り返しているものです。

設計士と工務店の社長あたりにこの病気が掛かってる方が非常に多いです

どんな防水でも基本的な防水の納まりというのは考慮しないといけません

一番高い防水ならどんな状況でもカバーできる

そんな事はないのです 絶対にです。


広島発 お客様と優秀な職人を繋ぐ外装リフォーム集団 RCS

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