塗ってはいけない屋根?塗らない方が良い屋根?

塗装出来ない屋根材がどういう風にして日本の住宅の屋根に出回ってしまったのでしょうか? 話を始める前にまずはその背景について解説します。 日本では、古くは茅葺き屋根や陶器の瓦が多く使われていましたが、明治時代になると作業効率も良く、 耐久性のある「石綿スレート」が輸入されました。セメントに石綿(アスベスト)を混ぜて圧縮成型した 【石綿スレート】は、断熱性・防火性・耐久性が高く、日本の屋根建築資材として多く普及しました。 しかし、アスベストが原因と考えられる悪性中皮腫や肺の繊維化・肺がんが多く報告されて 本当に大きな社会問題となっていきました。 昭和35年(1960年)に「じん肺法」が施行されてから段階を経て規制されていったアスベストは、 2004年(平成16年)「労働安全衛生法施行令」の改正によって、アスベストの含有量が1%を超える建設材、 資材の製造・販売が禁止され、2006年(平成18年)には、アスベスト含有量0.1%を超える石綿(アスベスト) 含有製品の製造、輸入、使用等が禁止されたのです。 石綿が完全に規制されたのは、2004年ですが、建材メーカーは、1990年頃から石綿抜きの屋根材を製造販売していました。 これらが昨今、問題になっている塗装できない屋根材です。 1990年後半〜2004年頃までに製造・施工された屋根材のほとんどは、アスベストの健康被害を危惧し、 2004年に定められた規制をクリアする為に、アスベストを使用せずに製造・販売された ノンアスベスト屋根材です。 急遽、アスベストを使用しなくなった為、その時期に製造・販売された屋根材は、 どのメーカーの屋根材も耐久性が悪くて8年~10年くらいすると不具合が多く報告されはじめて、 その後生産されなくなりました。 実はこのノンアスベスト屋根材は、全国の戸建住宅に多く使用されて、 その当時に建てられた屋根の多くがリフォーム最盛期を迎えて、簡易的なメンテナンス方法である「塗装」 が出来ないとういうことで多くの方々を悩ませています。 この時期に製造・販売されたノンアスベスト屋根が耐久性に非常に乏しいということなのですが これらの屋根材は、なぜ塗装出来ないのか、なぜ塗装しては「いけない」のか? 厳密に言うと 塗装してしまうと「塗装する前よりも劣化が進んでしまう」屋根材なのです。 この時期のノンアスベスト屋根材は「非常に脆い(もろい)」です。 通常の屋根材に比べ遥かに耐久性が無く、踏みつけなど 外的要因の有無に関わらずに 経年劣化によって自然と割れはじめます。自然と割れてしまうほど非常に脆い材質なので、 人の重みが加われば、当たり前のように「割れます」 屋根材に塗料を塗ることが悪いのではなく「塗装する為に人が屋根上で作業することで」 塗装出来ないノンアスベスト屋根材は、破損してしまうのです。 塗装する前よりも、塗装してしてから数年後にクラック・割れ・欠落などの症状が圧倒的に多く現れます。 塗装してはいけないノンアスベスト屋根材7種と あまりお勧めしない屋根材1種について 解説します塗装専業だけでは語れない、そんな内容です 



 (1)コロニアルNEO  

コロニアルNEOは、2001年に”クボタ(現KMEW)”からアスベスト規制により使用出来なくなった 【ニューコロニアル】の後継として販売されていたノンアスベストスレート屋根材です。 その後、2008年に後継であるコロニアルクァッドが発売されるまで約7年間の販売で終了しました。 その7年間の間にコロニアルNEOは、全国の戸建て住宅の屋根に使用されました。 塗ってしまうと不規則なひび割れが起きたり変色したりします。 劣化が進むと塗装ではなく屋根の葺き替えが原則になります。 


 (2)パミール  

パミールは、1996年から2008年にニチハから製造販売されていました。 7年前後から劣化が始まり、10年経てばボロボロになるほど耐久性が乏しいスレート屋根材です。 その当時のニチハの主力屋根材の一つでもあったので数多くのパミールが出回りました。 裁判沙汰にもなりテレビでも報道されるような社会問題化している屋根材のひとつです。 塗るまでもなく 経年劣化で層間剝離した状態になってるケースが多いです。 


 (3)ザルフグラッサ  

ザルフグラッサは、先述した塗装出来ない屋根材のコロニアルNEOと同じくクボタ (現KMEW)から製造・販売されていたスレート屋根材です。 正式には、1997年~2006年までクボタ(現KMEW)から販売されていた「ザルフ」 の高耐候仕様として販売されていたのが「ザルフグラッサ」です。 形状もほぼ一緒なので、現在は、ザルフかザルフグラッサのどちらかで通じます 「ザルフ」「ザルフグラッサ」共に、2001年~2006年前後に製造・販売されたものは、 アスベストを使用しないノンアスベスト屋根材になっており、施工後8〜10年経つに劣化症状が現れます。 これもコロニアルNEO同様に塗ってしまうと不規則なひび割れが起きたり層間剝離したりします。 劣化が進むと塗装ではなく屋根の葺き替えやカバー工法が原則になります。 


 (4)アーバニー  

アーバニーは、1982年から2005年まで旧クボタ(KMEW)から約23年間に渡り、 その特徴的で高級感溢れるスレート屋根材として、日本各地の住宅で使用されました。 他のスレートに比べ意匠性の高いアーバニーですが、その形状が故にアスベストが 含まれているタイプのものでもヒビが入りやすくなっています。 劣化が進むと割れや欠落が起きやすく 屋根上に上がるだけで欠落するような 状況に陥るので物理的にも塗装出来ない屋根になります 

 (5)レサス  

レサスは、KMEW(旧松下電工)からピュアベスト(900シリーズ)として 1999年~2006年まで製造・販売していたノンアスベストのスレート屋根材です。 レサスには、細かく分けると複数の種類が存在します。 ピュアベストレサス・レサス・ウーノ(レサスDX)・レサス・トレス レサスTX・エコ ウーノ(レサスECO18) それぞれ計上が違うのですが いずれもノンアスベスト屋根材です よって耐久性に難があり 塗装には向きでは有りません ひび割れ 反り 割れ 欠落  


 (6)グリシェイドNEO  

グリシェイドNEOは、2001年にKMEWから製造販売されていたノンアスベスト のスレート屋根材です。グリシェイドNEOの特徴は、下部の切れ端が真っ直ぐ になっており、表面にはうっすらと木目調の模様があります。 グリシェイドNEOは、、層間剥離が劣化が進むと見受けられます。 これはパミールほどではないですが雨水が浸透することで下の方から層間剥離してくるようです。 ひび割れ 反り 割れ 欠落 層間剝離 


 (7)セキスイかわらU  

セキスイかわらUは、瓦を模した圧型スレート(セメント瓦)で、軽く、強いという特徴をもち、 屋根カバー工法が可能なスレート屋根材です。積水屋根システム株式会社(旧セキスイルーフテック) から1970年から2007年まで販売されました。 1975年から1990年の15年間のセキスイかわらUには、約10~15%のアスベストが含まれており耐久性もありました。 1990年からノンアスベストのセキスイかわらUが販売されましたが、 発売されて間もなくして剥がれや割れなどのクレームが報告されてしまいます。 その後、セキスイかわらUは、2007年に販売が中止されました。 主な劣化は 瓦表面の塗膜の剥がれ ひび割れ 瓦材の崩壊  以上はアスベストの規制により材が脆弱になってしまって屋根材の強度が保てなくなる事が 塗装出来ない原因です。アスベスト自体は強度を担保できる良い面と人体に影響を 及ぼす悪い面があるという事が言えます。 ちょうど過渡期にあり 見切り発車的にノンアスベスト屋根材が生まれ そのしわ寄せが今発生しているという事ですね 


 (8)アスファルトシングル 

ここからは防水屋からの観点ですが 塗ってはいけない という屋根ではないですが アスファルトシングル という屋根が有ります。 アスファルト防水の砂付ルーフィングに生成方法が似ていますが スレート屋根の一枚と 形状が似ていて水下から水上に貼りあがっていくものです。 スレート屋根が良好な状況でもスペーサー 縁切りを正しくしないと部材同士の隙間が 狭くなり 毛細管現象で水がにじむように染み込む現象が起きます このアスファルトシングルもアスベスト問題が若干あると聞きますが それ以前より 15年以上経過すると劣化の進行は早く 援切りも難しいのでシングルの上に塗装を しても毛細管現象や部材の実質劣化で漏水の可能性はぐっと上がります 防水業者は基本上の塗装を勧めておりません。 スレート屋根以上にカバー工法が 確立されており、さまざまなカバー工法で改修するのが基本と私は考えます。 すべてにおいて言えますが この弱い屋根材イコールすぐ漏れると表現されるのは 正直私はノー と言いたいです。 それは何故か? これらすべての屋根材には最初にアスファルトルーフィングという防水を第一段階で 敷設して水の納まりを最初に形成しているからです。 漏れるケースはその 初期段階のルーフィングの貼り納めが悪かったケースがほとんどなので 表面の スレート屋根が劣化が早くてもすぐに漏れないケースが大半を占めると思われます。 塗装専門の方はその辺の知識は浅いので営業トーク的に表面が傷むとすぐ直さないと 漏れるという発言をされがちなのです。 美観と機能は相反すると言いますか、雨漏りするから早くメンテナンスしないと というポジショントークは 原職が屋根屋でも塗装屋でもない 防水屋目線での 意見であります。  表面は傷んでいますが下の防水シートが紫外線も当たらずに機能しているので すぐさま漏れる事にはならないが いずれ葺き替えやカバー工法を視野に入れましょうね そういう風に発言します。 塗装で対応するのは塗装屋さんのポジショントークに過ぎなくて貼っている立ち位置の人ならば『アスファルト防水の砂付きルーフィングと同様にしか捉えていない』と言うのです。カラーベストもシングル防水もきちんと対応しなければ【塗らない方が良かった】という事も有ります。屋根塗装をする際は細心の注意が必要です。


 以上が屋根塗装が出来ない7選 と 塗装を勧めない1選でした

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